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图书推荐-『わたしを語ることばを求めて 表現することへの希望』

牲川波都季・細川英雄共著『わたしを語ることばを求めて 表現することへの希望』

2020 07 27

 

本書は、日本語教育がご専門の細川英雄氏(当時、早稲田大学大学院教授)と牲川波都季氏(当時、同大学日本語教育センター助手)による教室活動の記録であり、その活動は、早稲田大学本庄高等学院(埼玉県本庄市)で2000年度の一年間に行われた、高校3年生対象の選択授業科目《日本語表現総合》(以下、〈総合〉)です。〈総合〉におけるおもな活動は、他者へのインタビュー等をレポートにまとめる作業でした。


「表現することとは、『わたし』から始まり、他者を経由して、『わたし』に還ってくるものであ」(p.224)り、〈総合〉が目指すのは、「自分なりの目で相手の発言を解釈した上で、その解釈の結果が自分にとってどういう意味をもつのかを表現」(p.193)できるようになること――。学校に「『わたしのことば』を取り戻し、『わたしのことば』で表現するという教室活動の意味がある」(p.20)という細川氏の言葉と合わせて、本書に一貫して流れる命題であるといえます。


「『日本語』を何とか習得したいという強い動機で授業に臨む留学生に比べると」(p.41)年齢も低く、切迫感もなかったはずの生徒たちが、教師の思惑をはるかに超えた成果を上げていく過程は、留学生と私のいる教室の風景が重なって映ります。もし自分のいる学校の教育現場だったら、自分はどうするだろうか、学生たちはどのように振舞うだろうか、と終始、想像力を働かせる楽しさを覚えました。


そのような学習者の成長過程全体を通して、「動機」と「オリジナリティ」という二つのキーワードが強いインパクトを持っていました。いずれも、私には、人生の岐路でつねに直面する問題だと感じているからです。


自分がなぜその人物にインタビューをしたいのか、なぜそのテーマで書きたいと思ったのか。「動機」が弱い生徒(あるいは留学生あるいはすべての人々)は、何事にせよ先入観やステレオタイプに陥る危うさに瀕しています。逆に、将来の夢という強い動機がある生徒(あるいは留学生)にとって、「自分の夢を実現させた人」への深い関心は、「相手の人間性の探究に広がっていく可能性をもって」(p.106)います。〈総合〉の生徒・茶谷は、インタビュー相手の写真家に感動し、その写真家が「僕にとって雲のような存在になった」(p.200)と印象的な感想を残しています。そして「自分の新しい問いを発見すると同時に、相手の思いも見つけることができ」(p.183)るという地点にまで到達してしまいます。


このことを牲川氏は、「偶然性」が生まれる授業であったと述べています。「他者との出会いと心境の大きな変化」を得て、「動機を真剣に考えさせるという細川が作った枠組みと、インタビューで他者との決定的な出会いを経験したという、細川の感知し得ない部分での成功が偶然に重なり合い」(p.202)、その生徒にしかできないレポートが形になりました。


教師が意図せずして雲の在り処を教える、ということに似たことは、私たち日本語教師にとっても、日ごろの教室活動で体験する感覚ではないでしょうか。これがもし留学生のレポート課題であっても、強い動機を持った留学生は、何とか自分のことばとして表現しようと頑張れるはずです。また、私自身も、そのような学習者と同様の立場に置かれるイメージさえ浮かんできて、こうした偶然の奇跡的なエピソードにはつよく共感させられました。


また、“その生徒にしかできないレポート”は、「わたしのことば」による「オリジナリティ」ある表現となり得ます。インタビュー相手の魅力を表現するにあたって、細川氏曰く、“魅力というのはそれを感じた人の中にしかないかもしれない。だから、魅力を感じた人自身の目を通して書かないと意味がない”と説明します。「細川の説明からは、『わたし』の視点が全ての出発地点にあるという、〈総合〉のコンセプトがはっきりと伝わってきた」と牲川氏は述べています(p.168)


この「オリジナリティ」においても生徒たちは、細川氏の想定を超えたようです。「相手の魅力を自分の視点でまとめる」だけでなく、「その魅力に対して自分がどう考えるか」ということも考えて議論するまでに至ります(p.225)。「動機」の問題と同様に、教師はここでも意図せずして雲の在り処を教えたのであり、実は、授業の成功というのは、教師の意図を超えた先にあるのではとさえ思いました。


私が普段、担当している上級クラスの作文指導においても、序盤の段階(年度の初め、5月の連休前後まで)とそれ以降とでは、空に浮かんだ雲を眺めるだけだったのが、その雲の中に入っていくような個性を見せ始める現象が毎年のように見られます。しかしそれは現象にとどまって何か見過ごされていないか、学生自身の持つ「動機」や「オリジナリティ」の大切さを伝えられているのか、反省し模索する過程の上に私は、います。


留学生が前向きに心のよりどころとしたくなるような、雲の在り処に学生を導くような授業を創造していきたいと、本書に向かい合って決意を新たにした、梅雨明け間近の夏の夜明けでした。(篠原)


*牲川波都季・細川英雄共著『わたしを語ることばを求めて 表現することへの希望』、三省堂、2004年。

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